恋しさとせつなさと心強さと

a0091515_16162235.jpg恩田陸 『夜のピクニック』 (新潮文庫)

恐らく、何年も先になって、やはり同じように呟くのだ。
なぜ振り返った時には一瞬なのだろう。あの歳月が、本当に同じ一分一秒毎に、全て連続していたなんて、どうして信じられるのだろうか、と。


通称「夜ピク」である。
子どもたちが小さい頃NHK「教育テレビ」で放送していた『六番目の小夜子』をいっしょに観ていたせいか女子供向けの作品を書くひとだと思っていた。名前からして「恩田三姉妹」(『やっぱり猫が好き』)ではないか。
読んでみようと思ったのはよく見ている「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」と言うサイトの「この「旅」の本がスゴい」で紹介されていたからだった。
なるほどこれは旅の本だ。長い道のりの初めの頃の大切な通過点について書かれている。振り返れば一瞬でしかない、それゆえに切ない時、明るくなる前の時をみんなで歩く、いろいろな思いを胸に。
異母兄弟の関係修復の話ではない。母への思いによって大人になる話だ。でも近親相姦すれすれまで届く甘い誘惑があるからこそ一瞬煌めくのだ。
映画化されているが観たくない気がする。本の方が気持ちいいと思う。
全く設定は違うが同じような年頃の子どもたちが集団でひたすら歩くリチャード・バックマン名義のスティーブン・キングの『死のロングウォーク』も傑作。

みんなで、夜歩く。ただそれだけのことなのにどうしてこんなに特別なんだろう。

by costellotone | 2012-06-13 16:26 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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