「もっとやれ。」

a0091515_8321573.jpg田中慎弥 『図書準備室』 (新潮文庫)

一時時のひとのようにテレビに映っていたひとの作品を初めて読んだのだが読んでみると同じように時のひとであった西村賢太よりも格段に愉しい。
表題作は術中に嵌って行く快感と言うか溺れるのが愉しいような不思議な感覚。文章の波のまにまに見え隠れする関係が鮮やか。
でもデビュー作である『冷たい水の羊』の方が遥かに強靭だ。強姦し殺害し自殺しようとする「いじめられている」人間の見方・考え方を描く。その短絡性・幻想性と合理性・無矛盾性が混沌として同時に一体となっている。ちょっと大江健三郎の最初期の作品たちに似ている。作品自体を愛おしくも思う。大江作品との差は家族や社会(教師やいじめる側の同級生たちだけではなく地方の風景も)との関係が明確に語られている点だ。そこが強靭に成り得た源だ。
これ誰か映画にして見せてくれないかな。特に冬の廃屋のシーン。尿に濡れた顔に黒い十文字が映る画を見たい。
さあ、『切れた鎖』を読もう。

by costellotone | 2012-06-15 08:35 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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