乖離する私

a0091515_911821.jpg中村文則 『土の中の子供』 (新潮文庫)

3日前に読んだ田中慎弥『冷たい水の羊』が強烈だったからどうも色褪せた印象になってしまうのだが、これはこれで心地よい。前者の方がこねくり回したアイデンティティーへの他者の暴力的介入の解釈と反発の論理作りでこちらの方が若干直線的だ。解りやすいと言えばそうだろうか。
表題作より短編『蜘蛛の声』の方が気に入ったのは橋の下に隠れると言う設定だろう。この設定自体はかなり陳腐ではあるのだが、僕自身が昔からちょっと憧れているからだ。多摩川べりを歩いていると川面に向かって建っているビニールシートなどで出来たテントのような小屋を目にする。ああ言う場所で暮らしてみたいと思ってしまうのだ。「隠れる」と言う意識は全くないからこの作品と比べようもないのだが。ただ単に川のそばで生きたいだけか。否そうとも言えないのは新宿の地下通路のダンボールを見ても似たような感情を抱くのだ。これさえも「隠れる」と言う意識がないとしたら何故だろう。何かに拘束されている気もないし。作品とは関係ないな。

by costellotone | 2012-06-17 09:22 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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