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Don't Believe the Truth

トニー・ガトリフ監督  『ガッジョ・ディーロ』 1997年 仏=ルーマニア
ロマン・デュリス ローナ・ハートナー イシドア・セルバン


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 父親が遺したカセット・テープを手がかりに、ルーマニアのロマ社会へ歌姫を捜しに旅をする「ガッジョ・ディーロ」(よそ者?)のフランス人青年。おせっかいなヨッパライのお爺さんや、愛し合うようになる女性との関わりの中で、彷徨う民族の逞しく生きて行く精神を映し出す。

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 『愛より強い旅』、『モンド』などのトニー・ガトリフ監督は、アルジェリア出身で父親がフランス人、母親がロマ。つまりは自身のアイデンティティを探る作品で、これ以降もいろいろな形でロマを撮り続けている。

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 主演は『スパニッシュ・アパートメント』でオドレイ・トトゥの相手役の彼。セドリック・クラピッシュ監督作品の常連で、最近は『ルパン』、『真夜中のピアニスト』で有名になったロマン・デュリス。日本にもファンが多いらしい。
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 クリトリッツァ監督の『ジプシーのとき』(1989)を先に観てしまっているため、この作品の映画的な稚拙さや展開の単純さが見えてしまうのが少し残念。クライマックスである民族への迫害・差別の描写もあまりに図式的過ぎて陳腐さを感じてしまう。がしかしそれゆえにリアリティーがあるのかも知れない。最後まで興味深く観る事が出来るのは、異文化の音楽と踊りの根源的な力と、主人公の屈託のない笑い顔があるからだろう。加えて寝癖の付いたかわいい髪型か。うん、ロマン・デュリスが売れるのは解る気がする。

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 最後にテープを捨て独り踊る主人公を見る女性の笑顔に、やはり生きる力の源が見えて来る。
 そしてその後には当然繁殖が待っているはずで、それがまた原動力になって行く。

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 ジプシー音楽の核心は、他の自立した音楽同様、「生き抜くこと」と「音楽」が一致したこと。叩かれれば強くなるしかない訳で、結果大陸各地へ蔓延り、カッワリー、クレズマー、フラメンコ、ブルガリアン・ヴォイスなどの成立に触発して行く。現在ではテクノも融合し新しいダンス・ミュージックやトランスなども生まれている。音楽と共に民族も、血脈と一部の精神を薄くしつつ、同時に強くもしつつ増殖して行く。
 
P.S. スティーヴン・キングの『痩せゆく男』はジプシーに呪いをかけられる話でしたよね。



by costellotone | 2007-01-22 11:57 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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