移動に関する3冊

a0091515_13553423.jpgギャリー・ロス 『象と逃げた男』 (新潮文庫)

生まれた時から20年間、芸を教え込み育てた2頭の象を調教師が廃業のために手放した。しかし買い主が支払いを渋り、かつ虐待からの保護のために調教師は2頭を奪還。かわいくもドでかい「the girls」を隠し、迫り来る司法の追っ手やFBIから5年間アメリカ全土を逃げまくる、と言う極めてアメリカ的な「愛の逃避行」のノンフィクション。
象の食事や排泄の量のことを想像すると目が眩む。(2頭で、1日300kgの食事と200kgの排便、これを5年。)滑稽さを含んだ、涙あり笑いあり、アメリカ社会批判や人間批判ありの読み物です。

a0091515_1356244.jpgジャック・ロンドン 『ジャック・ロンドン放浪記』 (小学館) 

ロバート・アルドリッチ監督の『北国の帝王』で描かれているのが、アメリカの列車にタダ乗りをして放浪生活をしている「ホーボー」と呼ばれる、これもまた極めてアメリカらしい民衆の姿。
『荒野の呼び声』の作者ジャック・ロンドンは1890年頃、青春時代をこの「ホーボー」として生きていた。映画の通り、列車の屋根を逃げたり、次の列車に飛び乗ったり、駅で仲間と酒を飲み、合衆国に不満をぶつけ、デモ行進をし、暴れては牢獄へ入れられ、物乞いをしたり、盗んだり。求めるのは唯一「自由」。それこそがフロンティア・スピリッツを、アメリカン・ドリームを育んで来た。多分、混迷する今のアメリカの精神の片隅にも生きているであろう「自由への憧れ」。多分今夜も、ギターを背に旅立つ若者が駅に向っていることだろう。あるいは「グレイハウンド」を待つ「真夜中のカーボーイ」。

a0091515_13562642.jpg石田ゆうすけ 『洗面器でヤギごはん』 (実業之日本社)

『行かずに死ねるか!』のチャリダー・石田ゆうすけの世界一周ルポ第3弾で、今回は食生活に視点を当てている。
世界を旅すると言うことは世界を食べることだ。食べてこそ世界が出現し、食べてこそ人間が、自分と言う人間が出現する。
ホタル舞うバナナの森は見たいし、フエゴ島のXXXは食べてはみたいが、XXXの乗ったレストランのテーブルは見たくない。こう思ってしまうのが今の自分だ、と言うことも解ってしまう訳だ。「サヨナラだけが人生だ」は「サヨナラだけが旅である」と同じこと。その果てにも自分と言う人間だけが見えて来る。
短い各章の狭間にどのくらいの距離が横たわっているのだろう。その間を著者は自転車をこぎ続けていたのだ。

by costellotone | 2007-06-10 14:18 | 読書 | Trackback | Comments(0)
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