カテゴリ:読書( 252 )

夢に関する3冊

a0091515_1453064.jpg内田百閒  『冥途』 (ちくま文庫)

『旅順入城式』、『花火』、『豹』など夢の短編(!?)が集められている。
師・夏目漱石の『夢十夜』よりもどんよりと、ぼんやりとしていて、そこがまた凄みがあって不気味。
中でも『件』は、頭が人間で身体が牛と言う物の怪に自分がなっていて、預言をして3日で死ぬと言われ、廻りの皆が預言を求めて迫って来る。それをまた自分がハラハラ見ている。
夢の中ですぐに泣き出してしまうのがチャーミング。

a0091515_1463851.jpg島尾敏雄 『その夏の今は・夢の中での日常』 (講談社文芸文庫)

敗戦直前の奄美群島の特攻隊に配置された人間の、極限の生と死の狭間の日常を、
あまりにも明るくのんびりとした島での生活を非日常的に描く。
状況からして「夢」としか捉えることが出来なかったのではないか。
スイッチに指が乗っかってしまっている時間と闘うには大恋愛しかない。
その後の後、しまおまほが生誕する。

a0091515_147058.jpgつげ義春 『つげ義春とぼく』 (新潮文庫)

20代の頃僕も夢日記をつけたことがあったが、ほとんど毎回同じような色合いだった。
つげ義春の世界に似ていたが、『ねじ式』や『ゲンセンカン主人』、『紅い花』などのような明確なテーマはなく、もっと薄暗く半透明だった。
夜中の山間部を走る汽車に乗っていて、過ぎ去っていく遠くの家の灯りをぼんやりと見ている。
関東近郊の鄙びた鉱泉宿へたどり着くつげ義春が見たであろう景色に近いと思う。

by costellotone | 2007-01-14 15:16 | 読書 | Trackback | Comments(0)

青春の3冊

a0091515_14123712.jpg大崎善生 『聖の青春』 (講談社文庫)

天才を弟子に持った師匠、ライバルや友達、家族に囲まれて「怪童・村山聖」が難病と闘いながら、将棋界の最高峰へと登って行く、29歳で夭折するまでの人生を描くノンフィクション。
ある夜ラジオから聴こえて来たドラマの原作がこの本で、翌日一気に読んでしまいました。
人生は戦いだ、なんて冗談にも言えなくなってしまう。若すぎるよ。

a0091515_1413117.jpg足立論行 『一九七〇年の漂泊』 (文春文庫)

ノンフィクション作家の著者が22歳の1970年、貪欲に自由を求めて世界へ旅立ち、彷徨った記録。苛立ち、焦り、もがく青春の欲望と情熱が赤裸々に綴られている。
何を希求しているのかが問題ではなく、その姿勢を維持し続けることに意味があると後に解る、足立論行の原点。
読んでいて辛くなるのは僕だけか。

a0091515_14133331.jpg立花隆+東大「立花ゼミ」 『二十歳のころ』 (全2巻) (新潮文庫)

1996年、東大教養学部の生徒たちが有名無名の人々に「二十歳の頃」をインタビューする。その頃あなたは何を感じ、考えていたのか。
おぼろげに浮かび上がって来るのは、みんなが希求した戦後民主主義の形。
二十歳前後のインタビュアーたちにストレートに返って来る設定が興味深く、それぞれのその後の人生に指針を与えているだろうと想像出来る。

by costellotone | 2007-01-06 14:30 | 読書 | Trackback | Comments(0)

釣りに関する3冊

a0091515_1117048.jpg今野保 『秘境釣行記』 (中公文庫)

昭和7年、北海道日高山脈の原生林、、染退川源流でアイヌと共に釣り歩く。
失われし黄金の魚影を想い描かれた最高の釣り文学であると同時に、
ソロー『森の生活』に匹敵する「自然を生きる」アンセム。
何よりも文章が生き生きとしていて惹き込まれます。

a0091515_11174728.jpg醍醐麻沙夫 『アマゾン・クライマックス』 (新潮文庫)

開高健『オーパ!』の水先案内人である著者が、
地上最大の淡水魚ピラルクを求めアマゾンを遡上する。
大自然の生態と、そこで生きる人間の生活を細密に、かつ色濃く描く。
開高氏の本と同じく写真がとても輝いています。

a0091515_11181275.jpg松坂實 『ナマズ博士放浪記』 (小学館)

椎名誠『イスタンブールでなまず釣り』に登場する、ナマズにとりつかれたナマズ博士が、
世界中のナマズを夢見る人生を説く。
「勝つために闘うのではない。好きだからだ。」と言う「あとがき」が納得ゆく書。
ホント、家族が大変です。みんな諦めちゃって楽しそう。


by costellotone | 2006-12-29 12:43 | 読書 | Trackback | Comments(0)

南米に関する3冊

a0091515_1342458.jpgガルシア=マルケス 『族長の秋』 (集英社文庫)

母親しか信じることの出来ない、死ぬことの出来ない孤独な権力者の時空間を、
饒舌な文体で滑稽にひたすら描く。はたして権力を頂点から掌握しているのか、
権力に囚われているのか。南米大陸の共同幻想。
『百年の孤独』よりも下世話で好きです。

a0091515_13435163.jpgレヴィ=ストロース 『悲しき熱帯』 (上・下) (中央公論新社)

「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」
全てはそれぞれの世界で自由に生きるしかない。
構造主義のフィールド・ワークと言うよりも、結構心躍る旅行記。
僕が読んだのは講談社学術文庫『悲しき南回帰線』の方。
参照:『松岡正剛の千夜千冊


a0091515_13441826.jpg向一陽 『奥アマゾン探検記』 (上・下) (中公新書)

共同通信社の著者が探検隊隊長として、1973年から4年間かけてオリノコ川から、
アマゾン川との分水嶺ジャングル地帯16300kmを走破した研究記録だが、
原始インディオの村で幻覚を見たり、ブヨとスコールに襲われたり、カヌーで転覆したりの、
『緑の底の底』の冒険譚としても、
昭和初期の冒険小説雑誌に載りそうなくらい面白く読ませる。

by costellotone | 2006-12-19 15:16 | 読書 | Trackback | Comments(2)

食に関する3冊

a0091515_1347839.jpgアサヒグラフ編 『わが家の夕めし』 (朝日文庫)

『アサヒグラフ』に20年間連載された、著名人の夕食時の写真集。
目刺しを食べる遠藤周作。猫を膝に酒を飲む清順監督。カップ・ヌードルの森敦。
中でも傑作はばあさんとビールと煙草だけの足穂翁。みんな楽しそう。
コタツ懸けやテーブル・クロスの模様に「昭和」が見える。
それにしても何処のキッチンも狭かったのだな。

a0091515_13474354.jpg開高健 『新しい天体』 (光文社文庫・新潮文庫)

取材費でおいしいものを求めて日本中を旅する、何ともうらやましい小説。
著者自身は終戦当時の中学時代の弁当は水。
読んでいて宍道湖のシラウオは無性に食べたくなりました。
人肉に関しては『最後の晩餐』(文春文庫)をどうぞ。

a0091515_1348458.jpg杉田浩一 『「こつ」の科学』 (柴田書店)

説明写真や表を入れ替え、先月30年ぶりに新装版が出版。
僕は料理が趣味だから、干ししいたけを戻す時は当然のようにぬるま湯に砂糖を加える。
その科学的根拠を説明してくれる本。この手の本の先駆け。
同出版社の『パン「こつ」の科学』にはお世話になっています。


参考サイト 「美味しい本が勢ぞろい
by costellotone | 2006-12-09 14:34 | 読書 | Trackback | Comments(0)

東京に関する3冊

a0091515_20413052.jpg加賀乙彦 『永遠の都』 (新潮文庫 全7巻)

三田にある外科病院と、娘夫婦たちが住む西大久保を中心に、
戦前から戦後への波乱の時期を越えて行く家族たちを描く大作。
東京と言う場所だけではなく、昭和と言う時代を読み取ることが出来る。
あまりに面白くて、勢い余って続けて北 杜夫『楡家の人びと』(新潮文庫)
を読んでしまったため、ごちゃごちゃになってしまった。

a0091515_20421368.jpg開高健 『ずばり東京』 (文春文庫)

開高が小説に行き詰った折りに武田泰淳に勧められて書き始めたルポ。
オリンピック前後の上昇志向の東京の片隅へ浸透して行く。
深夜タクシー、屋台のおでん屋、古本屋、下水、病院、スリ、葬儀屋、うたごえ喫茶へ。
開高ノンフィクションの出発点で、後にベトナム戦争、釣り、旅、と世界へ広がって行く。

a0091515_20424857.jpg種村季弘・編 『東京百話』 (ちくま文庫 全3巻)

東京の空間(生活、風習)、場所、人間について書かれたあまたの小説、随筆を
独文学者種村さんが編集したアンソロジー。絶版だったが今年復刊された。
とりあえずこれを読んでおけば「東京」が解る。と言っても昭和の、と言う括りが付くのだが。
平成の東京のアンソロジーは一体誰が編者になるのか。


この項あまりに多くてやめとけばよかった。昭和初期まででも、荷風、乱歩、谷崎、寺田、百閒、トホホです。
興味のある方は 「極私的東京本集成」と言うサイトがあります。
by costellotone | 2006-11-30 22:03 | 読書 | Trackback | Comments(0)

歌謡曲に関する3冊

a0091515_1941495.jpg近田春夫 『考えるヒット』 (文春文庫)

小林秀雄の『考えるヒント』からヒントを得て題名をつけられた、
毎週2枚のCDを論評する、『週間文春』に1997年から2002年まで連載された、
ハルヲフォン近田の「眼からウロコ」の痛快音楽評論集。全6冊。
世紀末に宇多田ヒカルと椎名林檎が出現し、小室哲哉からつんく♂へと移行して行くど真ん中。
イラストはソラミミスト安斎 肇。今再び。

a0091515_19421813.jpg中上健次 『天の歌 小説都はるみ』 (中公文庫)

何時もの中上らしくない文体に最初驚かされる。そしてすぐに気づかされる。
軽くブレイクを入れながら、ドライに、ドライに都はるみを描きながら、
日本人の中の「演歌」を浮き彫りにするのではなく、「演歌」に包まれた都はるみをやさしく守って行く。
芸能界にもう少し寄った有田芳生『歌屋 都はるみ』(文春文庫)もお勧め。

a0091515_19425094.jpg久世光彦 『マイ・ラスト・ソング―あなたは最後に何を聴きたいか』 (文春文庫)

今年春先に亡くなった演出家久世さんの、5巻で終わってしまった歌に関する随筆。
唱歌、軍歌、演歌、歌謡曲から賛美歌まで、はたしてあなたのラスト・ソングは、と語りかける。
それにしても久世さん、泣き過ぎ。
僕のですか。ベッド・ミドラー"In My Life"か中島美嘉"What a Wonderful World"かな。
泣けますか。
by costellotone | 2006-11-26 20:29 | 読書 | Trackback | Comments(0)

猫に関する3冊

a0091515_1343084.jpg内田百閒 『ノラや』 (旺文社文庫)

失踪してから「ノラや、ノラや」と言って、ひたすら探し続け、
毎日泣いて暮らす尊いお話。

ヒャッケンには師匠漱石のカバー、『贋作我輩は猫である』もある。
ついでに奥泉光に『「我輩は猫である」殺人事件』と言うのもある。

a0091515_1318217.jpgロバート・A・ハイライン 『夏への扉』 (早川文庫)

子供が小さい頃電車が好きで、『青梅鉄道公園』へよく連れて行った。
青梅線を越える陸橋の傍らに『夏への扉』がある。

ハイラインのこの作品はとても読みやすいSFです。
が、ビートという名の猫はほとんど出て来ない。けれども。

a0091515_1374852.jpg長田弘 『猫に未来はない』 (角川文庫・晶文社)

小学生の頃、夏の昼下がりに、1度だけ集会に連れて行かれた。
その後も2,3年に1度の割で召集がかかるのだが、
2回目ともなると帰って来られないような予感がして、
出席していない。
窓の外がうるさい。

by costellotone | 2006-11-22 13:47 | 読書 | Trackback | Comments(0)

アフリカに関する3冊

a0091515_12423927.jpgジョン・クッツェー 『夷狄を待ちながら』 (集英社文庫)

南アフリカ生まれのオランダ系移民(アフリカーナ)。
ノーベル賞作家。史上初ブッカー賞2度受賞。
反西洋、反合理主義、反モラルと言われるが、外観よりもこの作品自体の力に驚かされる。
アフリカが人間に書かせた、と言ってもいいのではないか。
アフリカは人間の矛盾そのもの。

a0091515_12441818.gifジェラルド・ダレル 『積みすぎた箱舟』 (講談社学術文庫・福音館書店)

イギリスに動物園を作るためにカメルーンへ動物を採りに行く話。
ノンフィクションのようで、とてもおもしろい話ばかり。特に蟻に襲われる件は。

池澤夏樹が訳した、ギリシャでの少年時代を描いた『虫とけものと家族たち』(集英社文庫)は、おとぎ話のように絵が思い浮かぶ名作。
          『アレキサンドリア四重奏』のロレンス・ダレルはお兄さん。

a0091515_1252597.jpgアーネスト・ヘミングウェイ 『キリマンジェロの雪』 (新潮文庫)

ハードボイルドと言ってしまえば、その通りと答えるしかないが、
「死」と「生」の狭間が大好きなノーベル賞作家。
その狭間がアフリカにある。釣りにある。女性にある。ナーダ(無)である。

同じアメリカからのアプローチに、ジョン・ブアマン監督の映画『エクソシスト2』がある。
by costellotone | 2006-11-18 13:27 | 読書 | Trackback | Comments(2)

前に金星 後ろに火星

子供が小さな頃に一番多く読んだ本。

スズキコージ 『エンソくん きしゃにのる』 (福音館書店)

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最近訊いてみたら、汽車で同席したおばあさんの、不思議な方向に曲がった指を覚えていた。
そのおばあさんが駅の構内を歩いていたことも。
僕が覚えているのは、隣に座った羊使いのお兄さんの弁当の中身。
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理解しがたいもの、怖いもの、不思議なものが一生こころに残って行く。
この子にはあの指が、と思うと嬉しくなってしまう。
by costellotone | 2006-11-17 14:13 | 読書 | Trackback | Comments(0)