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ちょっとだけふれる感じの

a0091515_113611.jpg来月からとうとうエキサイト・ブログにも広告が表示されてしまうので仕方なく有料に切り替えるか引っ越ししようかと考えている訳ですが、
以前からブログに書いた中で「あひるの学校」と「今日の料理」だけはローカルに保存しておきたいと思っていました。
エキサイトにはエキスポート機能がないのでこの作業が済めば簡単に引っ越す決心が出来ますからね。
で先週から「あひるの学校」をPDFに変換し始め昨日終わりました。
引き続き「今日の料理」を変換しようと思っていたのですが、その前に「あひるの学校」のPDFをネットで公開してみようと思いつきました。

と言う訳で今週サッカー日本代表が対戦するデンマークにある「Issuu」と言うサイトにUPしてみました。
「あひるの学校」
全て英語ですが登録は無料ですしかなり機能も充実していておもしろいサービスです。ページをめくる感覚が素敵です。

「今日の料理」の方もここにUPするつもりですがこちらは種類別の目次もつけたいので時間がかかりそう。

ところで他の広告なしの無料ブログに試しに登録してみましたが、もちろん慣れないせいもありますが使い辛いし、画像の容量などの制約もあるようです。
このままのこのスタイルを崩したくのでお金を払おうかな、と未だ迷っています。

by costellotone | 2010-06-22 11:47 | 日記 | Trackback | Comments(2)

あひるの学校-46

11、最後に - その8
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 毎日のように試行錯誤を繰り返しているうちに、天然酵母で作る場合はフランスパンや食パンのような混ぜるものが少ないプレーンなパンよりも、ライ麦やドライフルーツ、木の実など副材料が入った種類の方が作りやすいことだけは解りました。簡単に言えばあまり膨らまなくても商品になる、失敗が少ないと言うことです。
 天然酵母のパン屋さんの「ノアレザン」などはどっしりと重くて大きく、それなりの値段がつけられています。そこで同じようにフルーツや木の実が入ったパンでももっと小さくて、子どもやお年寄りでも手に取れるサイズで価格も抑えられた商品を作ろうと思いました。それが以前に考えていた小さくて種類のあるテーブル・ロールのように出来ればと思い5種類を考えてみました。
 とりあえず大きさは他のお店の1/3以下で1個100g。作るのは面倒ですし、値段も安くて利益は低いですが小さな子どものいる母親には手が出やすいと思いました。種類ですが「ノアレザン」は作るとして、以前パン屋さんで働いていた時においしいけれでも売れなかった「ひまわりパン」を先ず思い浮かべました。
 パンに混ぜ込む材料で無農薬のものをいろいろと取り寄せてみましたが、バナナとピーチは使えそうでした。両方とも珍しいし、果実自体の甘さがあるので砂糖を使わなくてすみます。この種類のパンはとりあえず砂糖不使用と言うことも商品価値に付加したかったのです。実際に両方とも作って食べてもらってみてOKでした。残りの1種類はひまわりとかぼちゃの種と松の実を混ぜ込んだ「シード・パン」を考えたのですがこれだけだと甘みが足りないし地味です。レーズンを加えては「ノアレザン」に似てしまいおもしろくないのでカレンズを混ぜることにしました。
 次にこの5種類に混ぜる粉を考えました。このようなパンにはよくライ麦粉を混ぜるとおいしくなるのですが全て同じだと普通になってしまいます。「ノアレザン」と「ひまわりパン」「ピーチパン」にはライ麦を混ぜ、「バナナパン」には小麦胚芽を、「カレンズ・シードパン」には全粒粉を混ぜ込みました。
これで5種類が完成し卸し先にからも了承されました。
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 いろいろな種類の試作の段階で決定しなければならないことのひとつに原材料の仕入先がありました。これはこれから僕がやるパン屋の方向性にも関わって来る問題です。具体的に言えば全て有機の材料で作るのか、そうではないのか。出来れば前者がいいのだろうけれども価格の問題と、安定した供給が得られるのかと言う問題もあります。
 大雑把に計算すれば全てを有機の材料で商品を作ればかなり高価になってしまいますのでちょっと一般的には手が出難くなってしまいます。それでも買ってくれるお客さんもいるのでしょうが、ロスの問題も大きく危険があり過ぎます。
 ドライ・フルーツやくるみなどの副材料は何とか有機の製品を手に入れることは出来るかも知れませんが、問題は小麦粉です。南部小麦など有機で生産されている小麦粉はありますが毎日安定して供給されるかは不安ですし、やはり高価です。あとはカナダ産、アメリカ産など輸入ものの有機の小麦もあることはありますが、こちらの方が国内産のものよりも安いのですが、やはり安定して手に入るかは疑問です。
 有機の小麦で作るのを諦めたのは、実際に国内産やカナダ産などでパンを作って食べてみた結果、味と食感が僕が求めていたものとズレがあったからです。いろいろな種類を作ってみたのですが、特に食パンの味がどうも固く感じたのです。生地が硬いというのではなく食べた感じなのですが。
 これまで僕が家庭で作って来たパンは北海道の「江別製粉」の「はるゆたかブレンド」を使っていました。この小麦で作ったパンの方が「ふくよか」な感じがするのです。食感ももちもちとしています。(「はるゆたか」は収穫量が少なくて100%の製品はなく、他の北海道産の小麦粉とブレンドされたものしかありません。ちなみにパンは強力粉で作るものとされていますが、厳密に言うと国産の小麦粉で強力粉はなくて準強力粉だそうです)
 小麦、ドライフルーツなどの副材料、砂糖、塩、ライ麦粉、ふすま、胚芽など全ていろいろな製品を取り寄せて実際にパンを作ってみながら決めて行きました。やはり価格が一番大きな問題でした。結局「出来るだけ無農薬有機のもを使う」と言うことにして「安全でおいしくて安い」を指針にしました。
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 毎日のようにパンの試作を続けるのと同時に機材の見積もりと仕事場の設計も大きな作業でした。もちろん資金の問題が一番頭が痛かったのですが最終的に「国民生活金融公庫」から借りることが出来ました。
 最低必要な機材はオーブンとホイロ、ミキサーの3点です。オーブンとホイロが上下で一体となった製品があるのでそれにしようと考えていました。それにしてもオーブンとミキサーは高価です。両方あわせれば車の一台は簡単に買えてしまいます。その他にも生地などを冷蔵しておくコールドテーブルやラック、めんだいから天板、食パン型などの細かいものまでいろいろ揃えなくてはなりません。
 各社のカタログを取り寄せて計算をしてみましたがやはりかなり高い。もちろん中古の製品も考えましたが、早く壊れやすいのではとか、メーカーの保証のことで気が進みません。新品で一括で具体的にいくらになるのか相談したくて江東区にあるメーカーを訪ねました。その会社に全てを任せてしまえばそれなりに安くはなりますがそれでも高い。それ以外にも仕事をスタートさせれば原材料費や光熱費、雑費など毎月出て行くお金が当然あります。無理にでも何処からか借りて、もし途中で仕事をやめなければならなくなった場合のリスクを思うと決心がつきません。
 半場途方に暮れながら帰宅すると知り合いから一本の電話がありました。僕の家の近くにあったパン屋さんが店を閉めるので機材を一括して売りに出すと言うポスターを見たと言うのです。その日は夜遅かったので翌朝電話を入れてすぐに見に行きました。実はこのお店でパンを買ったことはなかったのですが、夫婦ふたりでやっている小さな店で、オーブンやミキサーも一番小さな製品でした。加えてホイロと一体になっているオーブンで、僕が望んでいたものでした。製造の道具一式と言うことなので天板からめん台からめん棒、スケッパー、あんべらまで当然全て揃っています。こんなラッキーなことはありません。もちろん中古ですが新品でそろえるのと比べれば値段は1/3以下で手に入ります。即決しました。

 実はこの機材の購入以前に仕事場は出来上がっていたので、全ての機材を部屋に入れることが出来る大きさだったのでほっとしたのが本当の処でした。
by costellotone | 2008-12-02 12:57 | パン | Trackback | Comments(0)

あひるの学校-45

11、最後に - その7

 忘れていた訳ではありません。
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 大雑把に言って天然酵母のパンと言うのは2種類あって、ブドウなどから自家製酵母を起こして作る硬いパンと、市販されている「ホシノ天然酵母」など化学的に精製された粉末状の酵母を使用して作る柔らかめのパンです。(5年前は「白神こだま酵母」は出たばかりでした)

 最初は僕も「ホシノ天然酵母」を利用して商品を作ろうと考えていました。この元種を使えば時間的に計算出来ますし品質も安定しますし応用も利きます。毎日元種を仕込んでパンを焼く訳ですからこの安定性こそが一番重要ですし、今までずっとこれでパンを作って来たから安心です。それに価格的にもそんなに高価なものではありません。
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  一番初めに商品としてイメージしたのは、子どもでも老人でも手軽に食べられる柔らかいパンで、なおかつ手に取りやすい小さなパン。小さなバター・ロールとかテーブル・ロールのようなものです。市販されているバター・ロールは生地量が60g前後だと思いますが、僕が作ろうとしていたのはその半分ぐらいの丸いパンでした。4個ぐらいを一袋にして見た目がかわいい商品にすれば買ってもらえるだろうと考えましたし、同じ形体で袋の中のパンが5種類ほどあればもっとお客さんに手にしてもらえるとも思いました。ちょっと楽しそうです。
 とりあえずプレーンのものを試作しました。材料は「あひるの家」で扱っていた江別製粉の「パン用強力粉」と塩は「海の精」、砂糖は「洗双糖」で「ホシノ天然酵母」を使いました。これだけなら今まで家庭で子どもたちのために作って来たものと同じですので、いかに柔らかい生地に出来るか試作を重ねました。と言っても配合を変えたり発酵時間を変えたりするだけのことですが。
 次に種類を増やすことを考えました。粉に全粒粉やライ麦、ふすま、パンプキン・パウダー、コーン・ミール、よもぎ粉、きな粉を混ぜたり、レーズン、かぼちゃの種、くるみ、ひまわりの種、ドライ・ハーブ、フライド・オニオンなどを入れ込んだりしてみました。
 こんなことを半年の間毎日のようにしていました。このテーブル・ロールの他にも同時にいろいろなものを試作していました。もちろん今のように仕事場がある訳ではなく、狭い台所で小さな家庭用オーブンで夜中に作っていました。いろいろなお店で発泡スチロールの箱(トロ箱)を貰って来たり、衣装ケースに生地を入れて発酵させたり、焼き上がったパンを網に乗せて台所中に並べていたり大変でした。冷蔵庫の中も配合を変えた元種や生地や材料でメチャクチャでした。

 (今回この時期に書いていた「パン日記」を読み返してみましたが驚くことばかりでした。本当によくぞやったと言った感じで我ながら感心です)
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 けれども作っているうちに何か物足りないものを感じて来ました。これならば別に僕が作らなくてもいいし、似たような商品もあるだろうから差別化も出来ません。と言うことはあまり売れないと言うことに直結してしまいます。
 「ホシノ天然酵母」の利用を諦めた理由のひとつは柔らかい生地を保つためにはやはり少量でも油脂を加えなければならなかったことでした。いろいろな方法、例えば生地の水分量や元種の量を変えて行ったり、砂糖の代わりにハチミツにして保湿性を持たせたり、ポーリッシュ法を試したりしました。実際これらは僅かですが効果はありました。しかしこれと言って決定的な解決にはなりませんでした。差別化の理由もあって僕は最初から卵、牛乳、バターなどの油脂は使わないことでポリシーを出そうとしていましたからこれらを使うことは考えていませんでした。しかし結局今はマーガリンとオリーブ・オイルは数種類の商品に使っていますが。
 と言うことで「ホシノ天然酵母」を諦め自家製の天然酵母を作ることに方向転換しました。ところが実は僕はこの時まで自分で酵母を起こしたことがなかったのです。10年間「ホシノ天然酵母」だけでパンを焼いて来たのです。
 販売されたばかりの「白神こだま酵母」でも何種類も試作をしてみましたが、とても簡単で短時間で出来るのは好都合でなおかつ柔らかいパンが出来るのですが、どうも癖がなさ過ぎて「天然酵母のパン」と言う色が出難いと思いました。

 またまた後日へ。
by costellotone | 2008-10-07 13:16 | パン | Trackback | Comments(0)

あひるの学校-44

11、最後に - その6

 パン屋さんで2年ほど働いた後レストランでも2年ほど働いて結局辞めてしまった訳で、客観的に振り返れば当時はかなり落胆・失望した状態だったと思いますが、しかし当人はいたって楽天的な性格なのでめげずに次の計画を思い描いていました。50歳近くの人間が恥かしげもなく無謀にも、自分ひとりでこの場所でパンを作って生活出来ないかを検討しました。
 ここからの1年が正念場になりました。仕事のことの他にプライベートな問題で裁判所や弁護士事務所や登記関係の事務所へ行ったり、禁酒禁煙のために病院へ通ったりと、この期間は考えることとやらなければならないことがとても多く、目まぐるしく忙しい日々が過ぎ去り、未だ5年しか経っていないのにかなりのことを忘れてしまっています。映画の編集の仕事を辞めて転職したことよりもドラスティックかつドラマチックに変革して行きましたので、これまで生きて来て一番頭を使った1年になりました。もしかしたら頭の中が真っ白だったのかも知れませんが。
 これから書くことは別々のことがいろいろと絡み合って、と同時に偶然とか幸運が重なり合って問題をクリア出来て行ったのでこれまで以上に文章がとりとめもなくなりますがあしからず。とりあえず前後の脈絡を考えずに想い出したことから書いて行きます。
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 先立つ資金がないのでこの計画を成立させるには問題を単純に明確化して解決する方法を考えなければなりません。
 先ずは場所です。普通のパン屋はお店がいる訳ですが、自分が住んでいる場所は住宅地で人通りも少ないのでここでお店を開く訳にはいきません。かと言って駅前などにお店を借りることなど経済的に全く出来ません。仮に店があったとしても人を雇うことも出来ません。
 そこで自分が住んでいるこの場所で仕事場だけを作り、他のパン屋さんに卸すと言う仕事が出来ないものか考えました。その可能性があったのは多分に国立と言う場所に依ります。僕は最初から普通のドライ・イーストで作ったパンなどを作ることは考えていませんでした。そのようなパン屋さんはたくさんあってどれも長年一生懸命努力してそれなりの営業成果を上げている訳ですので、その中に参入したところで勝ち目はありません。何らかの特殊な差別化をなさないと隙間には入っていけないのです。僕は家庭でアトピーの子供のために「ホシノ天然酵母」でパンを10年近く作っていたので、天然酵母のパンなら成り立つかも知れないと思いました。その当時国立市には天然酵母のパンを扱うお店が5軒ぐらいあり、その中に割り込むのは難しいのですが、逆にこの街は「自然食品」とか「天然酵母」とか「無添加」とかに対する住民の意識が高いと思いました。つまり同じ天然酵母でも他のお店にはないような商品を作れれば何とかなるのではないかと思いいろいろな天然酵母のパンを食べてみました。一般に天然酵母のパンと言うのは硬くて重くて噛み応えがあると言うイメージがあると思います。もちろんそう言う硬いパンを好きな人が多いから天然酵母のパンが商品として成り立っているのですが、柔らかい天然酵母の商品ほとんどありませんでした。数種類だけ見つけることは出来ましたが、それらは殆ど油脂や何がしかの添加物によるものがほとんどでした。離乳食にも使えるほどに柔らかい天然酵母のパン、噛む力が弱くなった老人にも食べることが出来る柔らかい天然酵母のパンが出来たら商品として成立するだろうと考えました。しかしそんなことは素人の僕が思う前に先人たちが考え試行しているだろうとも当たり前ですが思いました。でも本当に出来ないものか。それもいとも簡単に。

 話は前に戻りますが国立には『あひるの家』と言う無農薬有機野菜を扱うお店があって子どもが生まれた当初からお世話になっていました。子どもたちの口にするものはほとんどこのお店で購入していましたので毎日のように買い物に行っていました。当然店長さんや店員さんたちと懇意にさせてもらえるようになっていましたので時々パンの仕事のことを相談をさせていただきました。何度も家で試作をしては食べてもらいお店としての意見も聞かせていただきました。そうこうするうちにちゃんと商品化出来たらお店に置いてくれると言うことになりました。何ともありがたいお話でうれしかったのですが、そうしてももらいたい言う気持ちが最初からあったのが本当のところですが。
これで先ずは1軒卸し先の目処が立ちました。もちろん商品として成立するものが出来ればですが。
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 次に人件費を使わないと言うことですが、最初から僕ひとりで全ての作業をしなければ成り立たないことは解っていましたのでお店を持たないことにすればこれは可能です。
 パンは単価が安いので例えばアルバイトを一人雇えば営業的に大変な影響が出てしまいます。それよりもひとりでどれだけの量が出来るのかを追求して行った方が安全です。それに他人の生活のことを考えなくて済みますので気も楽です。
 パンの製造から原材料の発注や細かい資材の買い物からパンの袋のラベルを貼ることまでひとりでやる訳ですが実は僕はこう言うことが苦ではありません。逆に他人との共同作業が苦手ですし協調性もない方です。店のロゴやラベルのデザインやフォントを考えるのは楽しみでした。
 結局『あひるの家』へパンを届けるのも僕がやることになりました。これもパンをお店においてもらうことの条件ですが、自転車で10分ぐらいですので毎日でも雨の日でもたいしたことはありません。

※ 続きは忘れないうちに。
by costellotone | 2008-06-29 14:32 | パン | Trackback | Comments(0)

あひるの学校-43

11、最後に - その5

 今回はパンと直接には関係ないのでよろしければスキップして下さい。ほとんど自分のメモです。

 2軒目にアルバイトをしたパン屋さんも身体をこわして2年近くで辞めることにした時、そのパン屋の社長さんが経営するレストランで働かないかとお誘いを受けました。製パンの仕事をすることをほぼ諦めていて次の仕事の当ても全くなかったので喜んで引き受けました。と言っても料理は好きでずっとやっていたのですが所詮家庭での趣味の範囲ですし、当然調理免許は持っていないので不安はありましたが、まあどうにでもなれと言う歳相応の開き直りで決断した訳です。働く前に一度こっそりとそのレストランに食べに行ったのですが、特別においしい訳でもなくかなり普通の味だったので僕にでも出来るかなと思った次第です。
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 さてレストランで働くことになった途端に店はえらいことになっていました。僕が入る1週間前にテレビ番組でその店が紹介されてしまって開店時間前から行列が出来るほどの賑わいになっていたのです。僕はてっきり調理の仕事を一から教えてもらえるつもりでいたのですがとんでもありません。初日からてんやわんやのパニック状態で、前のパン屋の時の戦争状態よりもさらに頭の中が真っ白で忙しく働くはめになりました。最近まで足腰を痛めていたなんてことは到底言えない雰囲気で、言ったとしても誰も聞く耳を持たないような状況でした。
 ランチ・タイムは毎日満席の状態が3ヶ月ほど続いたあと、少しずつ客足も落ち着いて来てからやっと仕事を教えてもらうことが出来ました。と言うよりも毎日あまりにも忙しくてその時点ではすでにかなり憶えてしまっていたのですが。
 お店はキャパが30人ぐらいのレストランで、スパゲティ、カレー、ハンバーグやステーキなどですが少しだけイタリア料理を出していました。と言ってもちゃんとしたイタリアンのコースがある訳でもないのですがスパゲティは6種類ぐらい作っていましたし、チキン・カチャトーラやバルサミコ風味の魚介類の料理、シーフード・マリネなどもありました。変わったところではタンの煮込みや鴨のソティーも作っていました。言ってみればポリシーがないような何でもありのレストランでした。
 働いていたのは店長とアルバイトの4,5人だけで、僕は一応チーフと言うか助手と言う立場でした。ところが半年ほど経って僕が料理を大体マスターした頃に店長が店を空けるようになってしまったのです。もともと僕を誘ってくれた社長はパン屋4軒とレストランとラーメン屋を経営していたのですが、店長が他の店の手伝いに出かけるようになってしまったのです。店長がいない時は僕がアルバイトの子たちを使って一人で切り廻さなくてなりません。つまりは雇われ店長になってしまったのです。本当はいけないことかも知れませんが、調理免許がない人間(僕)がアルバイトの学生たちと毎日レストランをやっていた訳です。
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 料理が趣味だとしても職業としての調理は大変でした。先ず作る数が当然違いますし、お客さんを待たせないようにスピードも求められます。もちろん1番大切な味の問題と衛生管理も。人が口にするものを作ることと、お金を払ってもらうものを作ることの責任感もあります。
 極端に忙しくなると舌が麻痺して味見をしても解らなくなってしまいます。これは経験した人間でないとよく理解出来ないかも知れません。忙しくても全ての皿の味見はするように心がけているのですが、本当に塩を入れたかどうかさえ味見をしても解らなくなってしまいます。当然一度味見をしたら水やコーヒーを飲んで口を洗うのですが、それでも解らなくなるほど忙しい時もあります。一度だけ塩を入れずに料理を出してしまったことがありました。ごめんなさい。
 あと気にするのは料理に髪の毛などの異物が入らないようにすることです。1番注意したのは洗い物をする時のブラシです。皿やコップなどは全て洗浄機でするのですがフライパンなどはその度にシンクでお湯で洗います。その時に使うスポンジやブラシの小さな欠片が料理に混じることがあるのです。特に神経質になるのは、家庭でも使われている人も多いと思いますが、金属製のクルクルと丸まったたわしです。あれは金属製の鍋やフライパンを洗う時に便利なのですが何度も使っていると劣化して1cm未満の破片が出て来ることがあります。これも一度だけでしたがお客さんの料理に入っていました。その方が言ってくれたから解ったのですが、そうでない場合もあったかも知れません。それ以降は使わないようにしました。再びごめんなさい。
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 他に大変だったのは毎日最低でも30人分の日替わりランチのメニューを考えることです。朝の2時間ほどでランチの仕込みをしなければならないのですが冷凍食品は一切使いませんでした。そう言えば先に働いていたパン屋でも冷凍生地は使っていなかったので、もしかしたら社長さんの良心的な意向かも知れません。僕がいかに料理が好きだと言っても30人分の仕込が2時間以内で出来る料理を毎日考えるのは一苦労でした。夜遅く仕事帰りの道でも翌々日のランチ・メニューを考えていましたし、たまの休日には他の店に食べに行ったり本屋や図書館で調べもしていました。
 で、どさくさに紛れて書いておきますが、この頃僕は大きな問題を抱えていまして精神的にも肉体的にもどん底状態でした。まあ今思えばめちゃくちゃな時期でした。この頃を振り返るとよくぞここまで来れたと我ながら感心してしまいます。なんてね。
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 結局このレストランでも2年近く働いた処でまたしても身体をこわして辞めることになりました。パン屋の時からの腰の痛みに加えて手と腕と脚が攣ってしまい痛くなってしまったのです。痛みを伴った痙攣は少し時間が経てば治まるのですが、忙しく働き出すとすぐに再発してしまいます。もちろん医者に診せたのですがもちろん過労が原因で、休まなければ治らないとこれまた言われました。レストランの仕事もここで行き止まりになってしまいました。
 さてこれからどうするか途方に暮れたところで今回はおしまい。次回は来月にご期待。しないで。
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 ひとつ書き残しておきたいのは、パン屋とレストランの2種類の忙しい仕事をして大きなことを学びました。ひとつは嫌なことは先にやってしまうこと。やってしまえば嫌なことがひとつ忘れることが出来ます。10個やらなければならないことがあればひとつひとつやって行くしかありません。その中でも嫌なものから先に片付けてしまった方が後が楽です。
 もうひとつ、気になったことは必ずやること。これも前と同じようなことですが、何時までも気にしていても何も変りません。やってしまった方が楽です。と言うか次へ進むことが出来ます。ゴミが落ちているのが目に入ったら必ずすぐに拾ってしまうこととか、食べ終わった食器はすぐに洗ってしまうこと。おまけに、1つの動作でふたつのことをすること。何かを運んで行く時には何かを持って帰って来ること。その方が少ない時間が有意義に使えます。思い立ったらすぐに片付けてしまえば後で気にしないで済みますし時間の節約にもなります。本当に忙しい時には次に10秒手が空いたら何をしようかと考えながら働いていました。それでも時間が足りなかったのですが。
 最後に、仕事は自分がやりやすい状態にしてやること。仕事を始める前に台の上を片付けたり道具の位置を変えたり仕事の段取りを考えたり。料理が好きな人や調理の仕事をしたことのある人には解ると思いますが、これで仕事が早くかつうまく出来ます。結局これも時間の節約にもなります。
 と言いつつ時間がないのとまとまらなくて面倒になって来たので今回はここまで。今日が54歳の誕生日でした。ちゃんちゃん。
by costellotone | 2008-05-19 14:55 | パン | Trackback | Comments(2)

あひるの学校-42

11、最後に - その4
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 2軒目のパン屋さんで2年近くアルバイトのまま働きました。全体の流れや細かい作業の仕方を覚え、季節ごとのパン生地の状況や作業内容の変化が理解出来たら1年で辞めようと思っていたのですが、新しく入って来た若い子が先に辞めてしまったり、それなりにみんなに頼りにもされてしまい辞めにくくなっていました。
 それでも辞めなければならなくなったのは腰を痛めてしまったからです。この店は駅前にあり、周りに会社なども多くあって繁盛していたので1日の仕込みの量がかなりありました。加えて成形された冷凍生地を一切使っていないので自分のところで全て仕込んでいました。朝から食パン生地、フランス生地、菓子生地、ロール生地など各種類を20kgぐらいずつ仕込み、1日に2,3回転させていました。計量、ミキシングなどの「仕込み」を担当すると2ヶ月の間毎日この作業を繰り返します。先にも書いた通り、ゆるいパン生地を持ち上げるのはかなりの力が要ります。腰を落としてミキサー・ボールの中の生地を一気に持ち上げてバンジュウ(番重)に移します。(20kgの粉で生地はだいたい40kgです) 書くとたいしたことないように感じますが、実際の作業は重労働でした。毎日腰が痛くて湿布を貼ったりサポーターを巻いたりしていましたが結局医者へ行って診てもらうと、休まないと痛みは取れないと言われてしまいました。
 眼が充血したこともありました。痛くもかゆくもなく自分では気が付かなかったのですが、ある日突然仕事仲間に眼が赤いと言われました。次の休みの日に目医者へ行こうと思っていましたが、4,5日後には赤みはひいてしまいました。多分これも疲れからでしょう。
 と言う訳でこれでパン屋修行は終わってしまいました。当然この時点でパン屋になることも諦めました。具体的な計画も何も出来ていなかった訳ですから当たり前ですが。
 仕事を辞めるとパン屋さんの社長に告げたところ、この社長が経営しているレストランで働かないかとお誘いを受けました。ここから先の3年近くはパンとは関係なくなるので後日。

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 パン屋さんで働いていた時に気になった油脂のことを書いておきます。
 パンを焼く時に乗せる天板や食パン型などには生地がはがれやすいように油脂を塗ります。これは業界では離型油と呼ばれるもので、食パン型などには毎回、天板は汚れた時に塗っていました。この油脂は家庭で普段使っているようなサラダ油などではないようで、一斗缶に入っていて固まっていました。小さなモップのようなものでこの油脂を塗っていました。もちろん口に入っても問題はないとは思いますが素人には解らない化学的に改良された油脂のようでした。
 もうひとつ気になった油脂はクロワッサンやデニッシュに折り込むバターのようなものです。家庭でこれらを作る場合は常識的に市販されているバターを薄く正方形に伸ばして使うのですが、業務用には「バター風味」のマーガリンや油脂と言う商品がありまして、すでに正方形になったものが冷凍にされています。熟成バター風味だとか発酵バター風味だとかあったり、「バターのような香り」のする油脂だとかあります。一度幕張メッセで催された製パンの見本市へ行ったことがありますが、この種の油脂が何十種類とあって驚きました。よく街のパン屋さんからクロワッサンなどを焼くバターのいい匂いが漂って来ることがありますが、もしかしたらこのような油脂だったのかも知れません。
 ショートニングの他にも「製菓改良脂」とか「粉末油脂」とか油脂の世界は不気味です。化学的な製品では他に発酵促進剤(イーストフード)とか生地改良剤(BBJ)とかも一般的なパン屋さんでは使っています。これらによっていつまでもふっくら柔らかなパンが出来たり、フランスパンの気泡がよく出来たりします。コンビニやスーパーなどで売られているパンの材料表示の中には保存料や着色料、膨張剤、保湿剤、増粘剤、安定剤などやカタカナの訳の解らないいろいろなものが書かれています。もっと心配なのは、街のパン屋さんのほとんどは商品が袋に入れていない状態で並べられ、お客は自分でトングでトレーに乗せてレジへ持って行って袋に入れてもらいますが、この場合は原材料表示の義務がないので何が添加されているのか全く解りません。フィリングやトッピングで使う業務用製品にはとにかくいろいろなものがあります。ホイップ・クリームとかチョコレート、カスタードやマヨネーズなども不気味なものがありました。

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 ついでに想い出を少し。
 このお店で働いて1番楽しかったのは年に1度の3日間の大売出しの時でした。よりによって僕がオーブンを任されてしまい格闘ゲームをやっているようなパニック状態でした。ひとりで6つのオーブンを見るのですが、ひとつで天板が4枚入り、それぞれ違う種類のパンを焼かなければならないのです。自分が今何をやっている最中なのかも解らないほど頭が真っ白の状態で、タイマーが鳴っても聴こえません。もちろんどのオーブンに何が入っているかも解らないまま作業をしていました。当然焦がしてしまう時もあるのですが、反省している暇もなくすぐに捨てて目の前から葬り去り次の作業へ向って行きました。本当に大変だったけれどとても楽しい想い出です。祭りでしたね。
 クリスマスのシーズンも楽しかったです。パン・ド・ノエルやシュトレーン、パネトーネ、リース・パンなどこの時期にしか作れない商品を作っていました。チョコレートでコロネをコーティングしてツリーのパンも作りました。
 反対に嫌だったのはアンパンマンやドラえもんのパンの顔を描く作業。2、3cmの小さな生地が天板1枚に30個並んでいて、これにひとつひとつチョコペンのようなもので顔を描かなければならないのですが、ド忙しい時にこの天板が4枚もホイロから出て来た時の気分はちょっと表現し難いですよ。落胆よりも情けなかったですね。たまにウィンクさせたりアッカンベーさせてりして気分を紛らわせていました。
 悲しいのは1日の終わりに売れ残ったパンをゴミ袋に入れて捨てる時。一応普通のパン屋さんはその日のうちに作ったものは翌日売らないことになっているようです。もちろん店員やアルバイトの子が家に持ち帰っていいのですが、雨の日や予想に反して作り過ぎてしまう日もあって、そう言う日の夜は捨てなければなりません。早朝からみんなで一生懸命に作ったパンを捨てる訳ですから悲しくもなります。今でも残ってしまったパンを捨てなければならない時が当然あるのですが、やはり悪いことをしていると感じますし情けないですし悲しいです。

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 ではまた次の機会に。
by costellotone | 2008-04-09 13:04 | パン | Trackback | Comments(0)

あひるの学校-41

12、番外編-3

家庭用にも便利かと思いますので、普段仕事場で使っているグッズを紹介しておきます。

2日前から急に暖かくなって小さな虫たちが飛んで来るようになりました。
仕事場は木造で、しかも酵母の匂いがありますから虫たちがここぞと寄って来ます。
エアゾールやバルサンなどの殺虫剤は一切使用しませんので他に対策を考慮しなければなりません。
そこで活躍するグッズです。

これは殺虫ラケットです。
大きさは卓球のラケットとバトミントンの中間ぐらい。ボタンを押すと金属製のネットに電気が流れて虫を殺す仕組みです。
単3電池2本使用。確か香港か台湾製。
空気を汚すこともなく安心して使えますが、感電すると少しですが衝撃と痛みがありますので子どもには注意して下さい。
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「アース製薬」から販売されている「コバエがホイホイ」と言う誘引殺虫ポット。
虫を誘引する匂いのゼリーが入っていて、一度くっついたら出られなくなってしまいます。
こちらも噴霧ではないので便利です。
2,3週間有効。
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もう1つは虫には関係ないもので、オイル・スプレーです。
天板には油脂を塗らずにベーキング・シートを使っていますが、食パン型は1週間に一度ぐらい有機のオイルで拭いています。その時に使うのがこのスプレーです。
市販されているスプレー式のオイルはガスを使っていますし、中のオイルを好きなものに変えることが出来ません。
これはオイルを自分で入れてポンピングをして噴霧する製品です。(ポンプ式の水鉄砲式のようなものです)
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3つ共近くのホーム・センターで購入しました。
殺虫ラケットが2000円ぐらい、殺虫ポットが500円ぐらい、オイル・スプレーは1000円ぐらいでした。
by costellotone | 2008-03-13 14:01 | パン | Trackback | Comments(4)

あひるの学校-40

12、番外編-2

鬼無里(きなさ)酵母のつづきです。

前回は食パンを作って一応成功でしたので今回はフランスパンを作ってみました。
全体の量が前回は多かったので今度は半分の量で仕込んでみます。と思ったまではよかったのですが、とりあえず中種を前回の配合の割合で仕込んでしまいました。
ここでのミスは
① 一応フランスパンなのだから100%強力粉で仕込まなければならなかったのに中種で全粒粉を混ぜ込んでしまった。
② 前回の食パンよりもフランスパンは水分量を減らさなければいけないのに前回と同じ割合で中種を仕込んでしまった。
と言う2点。①に関してはもらった元種自体に全粒粉が使用されているし、種を継ぐ関係で全粒粉が必要なのかも、と思いましたので一応無視してこのまま本ごねします。しかしこの生地からまた元種を取り分ける訳ですから、貰った元種と配合が変わって来てしまいます。このことで発酵力が鈍る心配も出て来ました。
②に関してはとりあえず全体量から逆算で本生地の配合の割合を変えます。前回は水が67%でしたので61%に減らすように本生地の強力粉の割合を前回よりも増やしました。これによって全体的には前回よりも元種の割合が少しだけ減ってしまったことになります。

以上あまり深く考えずに行きますがとりあえず今回の配合をメモ。
粉 100%(中種用全粒粉18%(150g)、中種用強力粉12%(100g)、本生地用強力粉70%(560g))
元種 7.4%(60g)
水 61%(500cc)
塩 1.8%(15g)

※ フランスパンと言うことで当然砂糖は入れないのだが、このことでこの生地から取り分ける元種に影響はないのかも疑問だ。一般的に酵母は何らかの糖分を必要とするので。しかし僕が作っている酵母は特に糖分を加えていないのだが。本当言うと解らん。

前回と同じく朝6時に元種を常温に戻し、昼12時に中種を仕込む。
翌日の朝6時に本捏ね。2分-2分でミキシング。生地温度25℃。
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1次発酵2時間30分で分割。
400g×2個と200g×2個。
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30分ベンチタイムをとって成形。
大きい方はコルプに入れてカンパーニュ風に、小さい方はバタール。
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2次発酵2時間で焼成。上220℃、下230℃でカンパーニュ25分、バタール18分。
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えーと、フランスパンとしては失敗です。
前回よりも元種の割合は少なかったのですがフランスパンとしては多いらしく発酵力が強過ぎでした。パンパンに膨らんでしまいクープがきれいに割れなかったし、膨らんだ分クラムが柔らか過ぎてしまいました。
味は前回と同じく素朴でおいしかったです。砂糖を加えなかったせいかほんの少し酸味を感じました。フランスパンとしては塩分が足りない気もしました。
フランスパンでもカンパーニュでもない中途半端なものを作ってしまったので次回は逆に全粒粉の割合を多くしてカンパーニュを仕込んでみます。元種をもっと少なく、水分も少なく、塩を少し多くして。
それにしても発酵力はとても強いです。
by costellotone | 2008-02-25 13:53 | パン | Trackback | Comments(0)

あひるの学校-39

12、番外編-1

先週松本に住んでいる友だちから自家製酵母の元種を送ってもらったので早速パンを仕込んでみました。

この酵母は知人から譲り受けたもので、鬼無里(きなさ・長野市)の湧き水と小麦粉で作ったものらしい。
僕はレーズンから酵母を起こしているのだが、一般的に果実や穀物から起こす場合が殆どで、このように湧き水の中に含まれるなにがしかの発酵菌の作用で酵母が出来てしまうのは頭では解る気もするがやはり不思議だ。中国の老麺は水と小麦粉だけで作るのだが、今も世界各地でそうやって発酵させてパンを焼いている人たちも多いし、無発酵のパンもたくさんある。一言で言ってしまえば自然の力ですね。

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送られてきた元種は約120g。
冷蔵の宅急便で送られて来て、着くとすぐに冷蔵庫で保存。
いっしょに送られて来たレシピには、焼く前日の朝に冷蔵庫から出して常温に戻し、夜に粉と水と混ぜて中種を作る。翌日の午後に中種に粉を加えて本ごね。つまりポーリッシュ法(水種法)ですね。
この量の元種で粉1.5㎏分が出来るそうです。

一応ベーカーズ・パーセンテージを計算してみました。
粉 100% (中種用全粒粉20%(300g)、中種用強力粉13%(200g)、本生地用強力粉67%(1000g))
元種 8%(120g)
水 67%(1000cc)
砂糖 2.3%(大匙3=35g)
塩 1%(大匙1=14g)

砂糖と塩が僕が何時も作っている食パンと比べてかなり少ないのですが、とりあえずこの数字のまま仕込んでみます。

朝6時に冷蔵庫から出して常温に戻したのですがすぐに容器の中でブクブクに膨らんでしまいました。多分宅急便の車に揺られて来たせいもあるのかも知れません。
夜まで待てば萎んでしまいそうなのでお昼12時に中種を仕込みました。
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最初は水っぽいのですが、時間が経つと元種が全体に溶けて発酵して来ます。
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翌朝の6時に本ごね。ミキサーで2分-5分廻しました。捏ね上げ温度は26度。
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1次発酵2時間で分割。450gを4個、210gを3個に丸めました。
この時に次のパン作りのための元種として120gの生地を取り分ける。これは冷蔵庫に入れて1週間ぐらい保存出来るらしい。
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30分ベンチタイムをとって成形。2斤用食パン型2本、1斤用1本、小型1本。
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2次発酵2時間半で焼成。上190℃、下230℃で35分。何時もの食パンの場合と同じです。
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先ず発酵力の強さに驚かされました。ポーリッシュ法は発酵力を増すために考えられた方法らしいのですが、それにしてもあんなに少量の元種からこれだけの生地を膨らませることが出来るとは。(湧き水と小麦粉だけ!)
食べてみると、酸味などのくせが全くない。砂糖と塩が少ないせいかほのかな風味が感じられる。天然酵母、特に全粒粉入りのパンに比べて硬さも重さもなく軽い食感。
天然酵母独特の酸味や重量感、噛み応えが好きなひとには物足りないと思います。反対にそれらに抵抗を感じていたひとや幼児やお年寄りにとっては食べやすいと思います。

取り分けておいた元種で次はフランスパンを仕込んでみます。
かなりの可能性を秘めた元種みたいですよ。



by costellotone | 2008-02-22 13:24 | パン | Trackback | Comments(0)

あひるの学校-38

11、最後に - その3
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 アルバイトとして入った割にはいろいろな作業や仕組みをなどを教えてもらい、時間が空いた時には麺台(緬台?)で簡単な分割や成形も教えてもらいました。ここで初めて「丸め」のコツを習ったのですが、これがうまく出来ません。みんなは簡単に瞬時に綺麗に丸めて行くのですが、僕がやると時間がかかって、汚くなってしまい、酷いときには膜が破れてしまいます。ていねいにやろうとしても結局使い物にならないものばかりが出来てしまいとても情けなくなりました。家に帰ってから即席に生地を作って練習をしたりもしましたが、この店では最後までうまく丸めることは出来ませんでした。今もうまくはないですが。
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 結局1軒目のパン屋さんは3ヶ月でやめてしまいました。アルバイトとして入ったのですが3ヵ月後に正社員にならなければならず、成形された冷凍生地が多かったり、すでに配合された粉が工場から運ばれて来るので他の店に替わろうと思っていたのです。正社員になってしまってから改めて辞表を出すのは面倒なので。
 全ての配合を自分の店で行い、冷凍生地を使っていない、かつ出来れば天然酵母も扱っているパン屋さんを探しました。と言っても製パン学校を出た20代の若者の求人はあっても、僕のような経験のない、それも50近い男を採用するパン屋はないだろうと半分諦めていました。
 希望に合う店を中央線沿いで見つけたのですが求人広告は出ていません。そこで飛び込みで訪ねて行くと店のチーフの人が話を聞いてくれて幸運にも採用されました。今でも何故採用されたのか解りません。(後で解って来るのですが、このチーフの男がとんでもない奴だったのですが。)
 辞めてしまった1軒目の店はチェーン店と言っても駅前のショッピング・センターに入っている小さな店だったのですが、今度の店は小さいながらも自社ビルで、1階にイート・インも併設している、パン工場の面積も広い処でした。一応全ての作業を自分の店で行い、「ホシノ天然酵母」を使ったパンも3種類程作っていました。
 前の店は仕事は8時開始でしたが、今度は5時開始なので毎日始発の電車に乗らなければなりません。終了時間は日によって6時だったり9時だったりします。休憩時間も不規則で1日でやっと1時間ぐらいでした。もっと遅くなると仕事仲間と別れれる時の挨拶は「お疲れ様」ではなく「また後でね」でした。僕は今度もアルバイトで入ったので正社員のようには決まった休日は取れませんでした。お金もなかったし、早く全てを覚えてしまいたいと思っていたのでそれでよかったのですが。後で過労で辞めるはめにはなってしまいました。(よく考えると労働基準法に違反していますね)。
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 この店もちゃんとシフト制で2ヶ月ごとに「仕込み(計量、ミキシング)」、「麺台(分割、成形)」、「釜(オーブン)」と分かれていて、「釜」の担当がクロワッサンなどのデニッシュ生地の折り込みをしました。もちろんそれぞれ手が少しでも空いたら他の部署を手伝います。分刻みの流れ作業的な仕事ですので助け合わないことには先に進みません。
 前の店と違って成形された冷凍生地を扱っていないので当然お店に並ぶ全ての商品は自分たちで成形します。店には50種類以上の商品が毎日並びますから、それぞれの成形を覚えるのに時間がかかりました。初めて作る形もある訳で、当然成形を失敗して何個も捨てることになりました。普通のパン屋さんですから菓子パンや惣菜パンも当然作ります。カレーやあんこを包餡(ホウアン)するのも最初は難しい作業でした。特にカレーの脂分が生地の端に付くとうまくくっつきません。無理にくっつけても油で揚げている途中ではがれて中身が出て来てすまいます。(あ、いけない、細かい話に入って来てしまった)。
 好きだったのはクロワッサンとデニッシュの成形でした。クロワッサンはうまく成形出来るといかにもプロになった気持ちになりましたし、自分で成形したいろいろな形のデニッシュがオーブンで焼かれて膨らんで行くのを見るのが好きでした。
 計量や配合、ミキシングの「仕込み」の仕事は前の店でもやっていたのですが、この店は食パン生地の量が多く、1日4,5回廻していました。1回に20㎏近く仕込むので、ミキサーの中から生地をバンジュウ(番重?)に移す時が大変です。固体ならまだしもだらだらのパン生地ですので腰を落としてミキサーの中から持ち上げないと床に落ちてしまいます。これがかなりの重労働で、結局2年後にこれで腰をやられて辞めることになってしまいました。
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 忘れないうちに書いておきますが、外から見ている分にはパン屋さんは焼き立てのいい匂いがするし、おいしそうなパンが並んでいてとても華やかで楽しそうですが、実際はかなり汚い仕事場です。粉はミキサーから常に舞い上がっているし、パン生地の端は落ちるし、惣菜パンのマヨネーズや菓子パンのクリームが飛んだり、ハムやベーコン、キャベツなどが落ちたりと工場内はメチャクチャです。毎日最後には床に水を撒いてモップで掃除をするのですがそれでも衛生上問題があったり、床下の溝から匂いがして来たりしていました。それでもゴキブリやネズミなどは見たことはありません。と言うのもそれなりの化学的な防御をしているからで、考えようによってはその方が恐いことです。一般家庭では使われない専門的ないろいろな薬品もあります。
by costellotone | 2008-01-28 15:18 | パン | Trackback | Comments(2)