E.M.フォースター 『インドへの道』 (ちくま文庫 )
人間は言葉を手に入れたせいか、とてもやっかいで面倒な生き物だと言うことを再確認させられる作品。 インドと支配するイギリスの関係での人間関係を描いているのだが、この小説は民族間の理解は不可能であると言う前提の基に書かれているので冷徹である。 原作をデヴィッド・リーンが映画化していて、先日「WOWOW」で観たのだが、原作では洞窟での女性の心理が解らなかったのだが、映像で見せられるとそれとなく理解出来た気がする。 アントニオ・タブッキ 『インド夜想曲』 (白水社) インドで失踪した友人を捜す旅をするイタリア青年の話なのだが、読み進めて行くうちに、どうも読んでいる自分が靄のように揺らぎ出し、自分の姿を求めて彷徨っている感覚に囚われてしまう不思議な小説。 インドの瞑想的な静かで暗く深い井戸に降りて行けます。夜寝る前にベッドで読むと夢の中で誰かに会えるかも知れませんよ。バスの待合室で兄弟に占いをしてもらえるかも。 この作品もアラン・コルノーによって映画化されています。でも小説の方がより想像力が働いて楽しかった。 ジョン・アーヴィング 『サーカスの息子』 (上・下) (新潮社) 映画を真似た殺人事件、小人の血を採取する医者、手術中の男娼、月影のバルコニー、「ダー警部」、走り去るボンベイの街並、猿、禁欲的修道士、サーカスの綱渡りが落下、社交クラブのゴルフ場…。まるで寺山修司の世界のように猥雑なものが渾然一体となってストーリーはデカン高原をシュールに転がって行く。 死体に象の絵を残す連続娼婦殺人犯は何を狙って迫って来るのか?。張形を抱いた女性ヒッピーは何を見たのか?しかし最大の不思議は、この小説が決してインドを舞台にしたミステリーなどではなく、何時もの巧みな技法と言葉を駆使したアーヴィング特有の人間賛歌だと言うこと。
by costellotone
| 2007-02-15 14:41
| 読書
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