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レコード棚から-22

荒井由実 - ひこうき雲 (1973)

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 「白い坂道が空まで続いていた」で始まる「ひこうき雲」の言葉たちを聴いた時にはすでにこころは上空へ羽ばたいていた。
 高石友也、岡林信康、高田渡等から始まった日本のフォーク・ソングの流れは、暗くて貧しい生活から歌われる世界や、高度経済成長を続ける現実と「70年安保」に象徴される政治状況へのプロテストがほとんどで、「かぐや姫」が歌った「神田川」からは「四畳半フォーク」と名付けられた私小説的な音楽が主流となり、吉田拓郎、泉谷しげる、井上陽水等が跋扈していた。
 そして満を持してのユーミンの登場であった。どんなにその詞と曲と声に驚いたことか。まるで丘の上の西洋屋敷の窓辺のお嬢様が憧憬する別世界のようだった。(実際のユーミンは八王子の老舗の呉服屋のお嬢さんだったけど。)
 それまでのテレビやラジオから聴こえてくる女性歌手(歌謡曲や演歌)の作られた声とはまるで違っていた。そう、隣りのクラスのかわいい女の子が歌っているような。
 全面的にアルバムを支えたのが「はっぴいえんど」解散後の細野晴臣、鈴木茂と、林立夫、松任谷正隆等による「キャラメル・ママ」で、卓越したセンスと遊び心あるウェスト・コースト・サウンドを作り出した。
 「死」、「天使」、「輝き」、「永遠」などの言葉をちりばめた詞は、収束して行く激動の時代からの現実逃避を含めた、絵に描かれたようなおとぎ話の世界で、アメリカのテレビ・ドラマのような憧れのテイストがまぶされていた。「ベルベット・イースター」、「空と海の輝きに向けて」、「紙ヒコーキ」、「雨の町を」など、この年齢の彼女にしか表せない世界だった。
 「ニュー・ミュージック」が誕生した瞬間でした。
 僕は19歳で、春が始まる頃、女の子の部屋で、夕暮れで、「紀ノ国屋」で買った、その頃未だ珍しかったハーブ・ティーを飲みながら聴いていた。

 P.S. いろんなひとが歌っているけど、aikoが歌った「ひこうき雲」が好きです。
by costellotone | 2007-02-20 13:57 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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