Yellow Magic Orchestra - Yellow Magic Orchestra (1978)
ジャーマン・プログレッシヴ・ロックの「クラフトワーク」が1974年に発表した『アウトバーン』がヒットし、続く『放射能 』、『ヨーロッパ特急 』、『人間解体』、『コンピューター・ワールド』で、旧ドイツ帝国のようにヨーロッパ大陸の隅々まで席巻して行った。全てコンピューターを駆使して製作された作品で、これがテクノ・ポップの発端であった。 デヴィッド・ボウイはスーパー・スター=ジギーの仮面を脱ぎ捨てドイツへ向い、1977年、シンセサイザーを多用した「ロジャー」を発表。ブライアン・イーノと前衛電子音楽的ROCK、ベルリン3部作を作り上げる。 ボウイと同じブリティッシュ・グラム・ロックと見られていた「ロキシー・ミュージック」も1974年『カントリー・ライフ』、1975年『サイレン』によってバンド・サウンドを確立し、「ニュー・ウェイブ」に方向転換、世界進出を視野に入れる。 アメリカではポスト・パンクの位置づけで、先ずニューヨークで「トーキング・ヘッズ」が『サイコ・キラー'77 』でデビュー。オハイオではイーノのプロデュースで「ディーヴォ」が1978年『頽廃的美学論』を発表。ジョージアで1979年「THE B-52'S」が デビュー・アルバム『警告!B-52'S来襲』を発表した。 このジャーマン・プログレとニュー・ウェイブの嵐は日本にも飛び火。元「はっぴいえんど」の細野晴臣、元「サディスティック・ミカ・バンド」の高橋幸宏、スタジオ・ミュージシャンの坂本龍一の3人が「イエロー・マジック・オーケストラ」を結成し、来るべき世界に挙手をした。 細野の企みは「アジアの片隅、極東の都市TOKIOの現時点での民族音楽の世界ディスコティークへの発信」であったのだろう。(「テクノポリス=TOKIO」のコンセプトは次の「Solid State Survivor」で提示される。)当時のTOKIOで一番響いている音とは何か?勤勉で背の低いこの民族国家に何が鳴っているのか?答えは都市の地下室に置かれた何万台ものテーブル・タイプのコンピューター・ゲーム機がピコピコ・ピコピコと奏でる音楽だった。(「スペース・インベーダー」のヒットは1978年から始まった。) よってこのデビュー・アルバムはコンピューター・ゲームのピコピコからスタートし、やがてTOKIOのその時点での位置が「FIRECRACKER」によって明確に示される。しかしその全貌が現れるのは6曲目、テクノと言えばこの曲、「東風」(TONG POO)である。メンバーが操る冷たいシンセサイザーとコンピューターからゆったりと流れ出るメロディーはあまりにもノスタルジックだった。女性のロボ声をブリッジして「中国女」へ渡される。目指すはオリエンタル・ディスコ・ミュージックの欧米征服だったのか。何千、何億の日本人がテクノ・カットに人民服で「ブレードランナー」のような近未来都市で、北朝鮮のような集団体操を踊るのか。はたして、アンドロイドは電気羊の夢を見るか? しかしテクノ坊やの蟻のような増殖に従い、YMOは悠久のオリエンタル・ムードを捨て去り、J-Popや歌謡曲、演歌も巻き込んで、より時代の最前線へ尖がって行く。けれども何時しか経済の巨大な欲望が、時代を引率していたはずのYMO自体をも呑み込んでしまっていた。多分その境目は坂本とキヨシローがKISSした瞬間。 そしてあちこちで残骸が踊っていた。ウルトラヴォックス、ザ・キュアー、ジャパン、ニューオーダー、ジョイ・ディヴィジョン、デペッシュ・モード、バグルス、ヒューマン・リーグ、マガジン、P-MODEL、プラスチックス、ヒカシューetc.etc. 踊り疲れたディスコの帰り、未だ遊び足らない女性たちが、出現し始めたカラオケ・ボックスへ向う。YMOを道に吐き捨てた、ブクブクと太った時代は次に小室哲哉を要求した。バブルへの突入であった。 ニューヨークの街角に貼られたYMOのコンサートのポスター。(アルバム「増殖(マルティプライズ)」) Yellow Magic Orchestra World Tour'80 From TOKIO To TOKYO 第2回ワールド・ツアーのラスト、1980年11月14日、ニューヨーク、パラディアム・シアター。 サポートメンバーは、矢野顕子、大村憲司、松武秀樹。 三角屋根の国立駅の前をランドセルを担いだ小学生が『ソリッド・ステート・サヴァイヴァー』を手に歩いているのを見かけてから4半世紀。三角屋根は見えないけれども、今も僕のパソコンでは時々Polysicsが喚いているのだ。トイス!
by costellotone
| 2007-04-08 14:11
| 音楽
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