ギャリー・ロス 『象と逃げた男』 (新潮文庫)
生まれた時から20年間、芸を教え込み育てた2頭の象を調教師が廃業のために手放した。しかし買い主が支払いを渋り、かつ虐待からの保護のために調教師は2頭を奪還。かわいくもドでかい「the girls」を隠し、迫り来る司法の追っ手やFBIから5年間アメリカ全土を逃げまくる、と言う極めてアメリカ的な「愛の逃避行」のノンフィクション。 象の食事や排泄の量のことを想像すると目が眩む。(2頭で、1日300kgの食事と200kgの排便、これを5年。)滑稽さを含んだ、涙あり笑いあり、アメリカ社会批判や人間批判ありの読み物です。 ジャック・ロンドン 『ジャック・ロンドン放浪記』 (小学館) ロバート・アルドリッチ監督の『北国の帝王』で描かれているのが、アメリカの列車にタダ乗りをして放浪生活をしている「ホーボー」と呼ばれる、これもまた極めてアメリカらしい民衆の姿。 『荒野の呼び声』の作者ジャック・ロンドンは1890年頃、青春時代をこの「ホーボー」として生きていた。映画の通り、列車の屋根を逃げたり、次の列車に飛び乗ったり、駅で仲間と酒を飲み、合衆国に不満をぶつけ、デモ行進をし、暴れては牢獄へ入れられ、物乞いをしたり、盗んだり。求めるのは唯一「自由」。それこそがフロンティア・スピリッツを、アメリカン・ドリームを育んで来た。多分、混迷する今のアメリカの精神の片隅にも生きているであろう「自由への憧れ」。多分今夜も、ギターを背に旅立つ若者が駅に向っていることだろう。あるいは「グレイハウンド」を待つ「真夜中のカーボーイ」。 石田ゆうすけ 『洗面器でヤギごはん』 (実業之日本社) 『行かずに死ねるか!』のチャリダー・石田ゆうすけの世界一周ルポ第3弾で、今回は食生活に視点を当てている。 世界を旅すると言うことは世界を食べることだ。食べてこそ世界が出現し、食べてこそ人間が、自分と言う人間が出現する。 ホタル舞うバナナの森は見たいし、フエゴ島のXXXは食べてはみたいが、XXXの乗ったレストランのテーブルは見たくない。こう思ってしまうのが今の自分だ、と言うことも解ってしまう訳だ。「サヨナラだけが人生だ」は「サヨナラだけが旅である」と同じこと。その果てにも自分と言う人間だけが見えて来る。 短い各章の狭間にどのくらいの距離が横たわっているのだろう。その間を著者は自転車をこぎ続けていたのだ。
by costellotone
| 2007-06-10 14:18
| 読書
|
Trackback
|
Comments(0)
|
フォロー中のブログ
リンク
最新のコメント
タグ
映画
So What ?
音楽
読書
Graffiti
パン
Today's Disc
料理
graffiti
今日の料理
学校
いきもの
パソコン
植物
編集
TV
京都
サッカー
あひるの学校
写真
ラジオ
正しく生きる
散策
memory
カミハテ
ビデオ
東京
弥勒
レコード棚から
演劇
Web Design
美術
堰組
Chagall
震災
FCP
film
蒲郡
もうひとつの生きるあかし
Mac
上原ひろみ
鈴木翁二
Now Playing
ニール・ヤング
コラージュ
絵画
映画演技Ⅳ
大学
rap
彌勒
Hasselblad
落語
ジョギング渡り鳥
赤い玉、
北白川派
二人ノ世界
Design
授業
検索
以前の記事
|
ファン申請 |
||